ダイヤモンド工具(PCD工具)がなぜ、鉄を削るのに使えないか。
ダイヤモンドは非常に硬い事で知られており、また、比較的高温にも耐える様で、切削工具として有能な材質です。
ただ、ダイヤモンドの欠点は、炭素原子の集まりである、という事です。
実は、鉄には炭素を吸収しようとする性質があるのです。
例えば、鋼の切削の際、刃先は800℃とかそれくらいの高温になると言われていると思います。
このくらいの温度になると、接触部からダイヤモンドの炭素原子が鉄に奪われてしまうのです。
もともとの硬さがあるので削って削れないという訳では無いでしょうが、
この反応によりダイヤモンドはだだっ減りになります. 減って減って減りまくって、ボロボロになる様です。
使えたとして、せいぜい手作業のヤスリがけなど軽い研削くらいのものでしょう。
コーティングされていない超硬合金にも劣ると思います。
超硬合金を削るのにも使えるダイヤモンドですが、鉄は削れないのです。
この性質のため、超硬合金では加工が厳しい高硬度鋼の加工には、
ダイヤモンドに次ぐ硬さを持ち、なおかつ鉄と反応し難い「cBN(立方晶窒化ホウ素)」と呼ばれる材質を使います。